白い毒

3/12
前へ
/14ページ
次へ
   遠慮がちに叩いた板戸は、かんたんに外れて倒れた。  木漏れ日が入った土間は、荒れた様子も無く、乾いている。  ふらふらと、引かれたように中へ入る。  日陰では、山の冷気がひんやりと頬をなでた。  少し、休ませてもらうだけ。  薄暗い土間の端。  古い建築らしく、部屋への段差は高い。おかげで式台は腰掛けるのに丁度良かった。  くずおれるように座り込んで、目を閉じた。疲れが一息に折り重なり、重くのしかかる。  怠さと悪心が渦を巻く。  ここまでしんどくなる事は、近頃無かったのに、またぞろ熱中症だろうか。  だとしたら涼しい場所は助かる。でもこんな所へ建物があっただろうか。    落ち着いていく呼吸のままに、彼は眠りに落ちていった。  
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加