白い毒

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*****  冷気に気付いて、目を開ける。  ひんやりと涼しい誰かへ、もたれて眠っていたようだ。視界の端へ、白銀の毛先が見えた。 「……果心堂さん?」  旧友かと、ぼんやりと呟く。心配してやって来たのだろうか。今日は来るようにはなっていなかったと思うけれど。  しかし、あわく薔薇の香が鼻先をくすぐり、見上げて息をのむ。 「貴方は……!」  ゆったりと満足げに笑む白皙は、見知った人物。  陶器のように白い肌。長いまつげは扇のようで、唇は昏いルージュの色に艶めいている。蠱惑的な整った顔。それを彩る、白銀のゆるやかな巻き毛。  死神。  板壁を背に座る彼に、後ろから腕をまわされていた。 「久しいな」  過分な色香を纏って、死神は目を細める。間近に聞く深い声は、ひどく優しい。だが腕はゆるめられず、むしろ抱き竦められた。 「安泰で何よりだ」  状況に、唐突な事に、ただ戸惑う。 「どうして、こんなところへ?」  尋ねてみるが、首もとへ顔を寄せた死神は、くすくすと笑うばかりだ。 「……お前は良い香がするな」  
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