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「お?」
帰宅途中、忘れ物をした事に気付いた私は溜息をつき周り右をして再び元来た道を歩き始めた。やっと学校につき、教室のドアを開けた瞬間
ドンッ
「?!」
私の視界は何かに覆われた。
「あん?」
これが私、月山月乃(つきやまつきの)と馬渕千秋(まぶちちあき)の出会いの始まりだったと思う。
顔を上げ、ぶつかったことに気付いた私はサッと血の気が引いた。こいつは馬渕千秋、校内一の不良だ。それに対して私は、自分で言うのもなんだがいわゆる優等生。何の縁か中学一年から現在の高校二年までずっと同じクラスだったが、彼とはなんの接点もない。何故か彼も目を見開いてるが、衝撃のあまり彼以上に目も口も全開な私に彼は言った。
「こんな時間に何してんの?」
正気に戻った私は答えた。
「物理の教科書忘れちゃって取りに来たんだけど‥‥馬渕君こそここで何してたの?」
「あ?俺?」
その時前のドアから逃げるようにパタパタと走り去る女子生徒が見えた。なるほど、そういうことか。
彼、馬渕千秋の髪は茶色く、耳にはピアスを開けている。もちろんどちらも校則違反。背は高く、一見スラッとしたシルエットながらも(さっき彼の胸に顔面を突っ込んだ時に分かったのだが)意外と筋肉質だ。何が言いたいのかというと、つまりはモテる。彼に求められて断る女はいないだろう。女に困らないのだ。
「‥‥‥‥」
軽蔑の目を向ける私。
そんな私に何を勘違いしたのかこいつはニヤニヤしながら
「なに?お前も遊んで欲しいの?」
カッと自分の顔が赤くなるのが分かった。恥ずかしさとバカにされたことによる怒りで少し声を低くしながら答える。
「そこ、通して。」
いつまでも入口にいる彼を押し退けて自分の机に向かう。机の中を漁っていると
「わりぃわりぃ冗談だって」
なんと、出ていこうとしていたはずの彼がへらへらしながらこっちに向かって歩いてくるではないか。
いや帰れよ!!!
と、そんな言葉は胸にしまい彼を無視して1人黙々と物理の教科書を探す。
「なぁなぁ~無視すんなよ~」
くっそ‥‥こんな時に限って見つからない。
物理め‥‥
常に学校においてあるサイドバックの中も探してみる。
「つーーきのちゃーーん」
馴れ馴れしく呼ぶな不良が。
私は捜索を継続した。
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