出会い

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馬渕千秋side その日は放課後隣のクラスの女と教室で待ち合わせていた。名前は‥‥覚えてない。だがそこそこ可愛いし相手も俺に気があるようだから遊んでやろうと思った。 遊び始めてからしばらくして 「‥‥あ‥‥ごめんもうすぐデートだから」 そそくさと帰り支度を始める。 男いたのかよ‥‥ 心の中で突っ込みながらも実は割とどうでもよかったりする。所詮はただの暇つぶしだ。じゃあ俺もそろそろ帰るかと彼女に軽く挨拶し出口に向かう。ドアを開けようとすると勝手に勢いよく開き、次の瞬間 ドンッ 何かが突っ込んできた。 これは俺、馬渕千秋と月山月乃の初めての出会いではない。 「あん?」 俺よりはるかに小さいソレが顔を上げる。 その瞬間俺は目を見開いた。 月山月乃だ。 彼女とは中1から高2までずっとクラスが同じだった。しかしほとんど話したことはない。 ーーーーあの時を除いては。 彼女はよほど驚いているのか目も口も全開だ。女子にあるまじき顔だが、そんな飾らないところも彼女の魅力の一つである。 彼女、月山月乃は成績優秀な上に可愛い。実際モテる。彼女の魅力は、一見自信のなさそうに見えるがその奥に強い意思を秘める大きな瞳や、笑うとハの字になる眉毛や、勉強の邪魔になるからかセミロングをいつも一つに束ねている髪や、小柄なのに大きく見せようといつも体全部で表現しているところなど、いくらあげても尽きない。 この機会を逃してはいけない、とりあえず話しかけてみる。 「こんな時間に何してんの?」 ハッとして彼女は答えた。 「物理の教科書を忘れちゃって取りに来たんだけど‥‥馬渕君こそここで何してたの?」 「あ?俺?」 不意をつかれた。その時俺は数年ぶりに見る彼女の真正面からのドアップの顔に見とれていた。 いやそんなことよりなんて答えるか‥‥ 本当のことを話したら幻滅され、引かれるだろう。それだけは避けたい。 言い訳を考えていると既に彼女は何かを悟ったのか、軽蔑の眼差しで俺を見ている。 ヤバイ。辛い。 それを悟られないよう笑顔を作り 「なに?お前も遊んで欲しいの?」 あぁ‥‥そんな言葉しか出てこない‥‥‥‥
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