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その日は確か授業参観があった日だから土曜日だっただろう。私は学校の支度を整え、
「いってきまーーす!!!」
玄関のドアを開ける。
「おはよ、つー」
いつものように零が私を迎えに来る。
「おっはよ!零!」
「...つー、帽子。」
「はっ、」
再び玄関のドアを開け二階へ駆け上がる。
「ちょっと月乃ーー?!どうしたのー?!」
「ちょっと忘れ物ーー!!!!」
無事帽子を被り階段をかけ降りながらお母さんに答える。
「よし!いこっ!」
いつものように、2人で学校へ向かう。
「そーいえば零こないだ3組の...吉田さん?に呼び出されてたけどなんだった?」
「あー.‥‥..、告られた」
「っはーーーやっぱりか。相変わらずモテますなぁ~」
「...別に...好きじゃないし。」
「そしてまたふったのか。吉田さん可愛いのに勿体ない。」
なんて、いつものようにくだらない会話をしていた時、事件は起きた。
高校生くらいのガラの悪い3人の男が反対側から歩いてくる。すれ違おうとすると、気づいた時に私の体は宙に浮いていた。
「?!?!」
「つー!!!!!」
男のうちの1人に担がれ、3人は走り出す。小学五年生の足で追いつくわけもなく、零と男たちの間には既にかなりの距離があり、
「零!!!!!」
2人の叫びも虚しくあっという間に零は見えなくなった。
すぐに見知らぬ路地裏まで連れてこられ、放り出される。
「何すんのよ!!!つか誰?!?」
私の声が空にこだます。どうやら近くに人はいないようだ。すぐ見える左手側には廃工場のようなものがあった。もちろんひとけはない。
私を担いでいた男とは別の男が口を開いた。
「お前が俺の弟を泣かせた奴か。」
「は?」
「昨日弟がよぉ友達が告ったのに理由も言わずふられたからその女に直接聞きに行っただけなのにお前に怒鳴り散らされた挙句悪者扱いされたって言ってきたんだよ。」
「いやだって相手嫌がってたし。」
「うるせーよ」
振りあげられる拳。
ガッ!
右頬から血が出ている。
イタイ。イタイイタイイタイイタイ
あまりの痛さに視界がチカチカする。涙が出てきた。口の中に血の味が広がる。
「なぁなぁー、こいつよく見ると可愛くね?俺タイプかも~」
男の1人がゲラゲラと笑いながら言う。
「確かに…ボコボコにするにはちょっともったいねーな」
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