カウンター席

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 もしかして、亡くなった常連さんのために、供養の品として出しているのだろうか。  大将がそこまでするなんて、いったいその常連さんはどんなお客さんだったのだろう。  そんなことを思いながらラーメンを食べる。そして、食べ終わった時、俺は隣席を見て目を見開いた。  ついさっき置かれたばかりの丼がカラになっていたのだ。  最初から中身がなかったとかじゃない。間違いなく、食べ終わった後の状態になっている丼。  いったい何がどうなっているのか判らず、俺は答えを探すように大将を見た。  目があった瞬間、大将は物凄く気まずそうな顔をした。その、何も言わないでくれという顔つきに、反射で黙ってうなずくと、俺は会計をして店を出た。  ちなみにその日、何故か俺のラーメンは百円引きになっていた。  あれ以来、亡くなったという常連さんの話を誰かに聞くことはないけれど、俺なりになんとなく思うところはある。  月命日に、損害覚悟で一日席を空けておかなくちゃならない。しかも、少なくとも一杯はラーメンをお供えしなければならない。…つまり、なんか そういう お客さんだったって訳だ。  こういう現象が起きるからといって、この店に通わなくなるとかはないけれど、なるべくなら、あの席には座りたくないと思った。 カウンター席…完
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