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カウンター席
家の近所にラーメン屋がある。カウンター席が十程度の狭い店で、全体的に年季が滲みまくっているから、新規のお客さんはほとんど来ない。だけど早い・安い・うまいの三拍子がそろっているから、いつも馴染客で混雑している、そんな店だ。
俺も、子供の頃からオヤジと通っているせいか、高校に上がる頃には一人で店に顔を出す常連になっていた。
そんな俺が、最近気づいたことがある。
カウンターの一番奥…コの字の先端の席が、一ヶ月に一度だけ、何故か荷物置き場になっているのだ。
ある時期、三食ラーメンでもいい! という嗜好になって、毎日この店に通ったことがある。その時からあれ? と思うようになり、最近ようやくちゃんと気づいたのだが、毎月十五日に限って、その席はさりげなく客が座れない状態になっているのだ。
椅子の上ばかりでなく、周囲にも重量感タップリの荷物を置きまくり、完全に使用禁止状態にして、どんなに店が混雑していても決してそこを使おうとはしない。それだけでも不思議だが、もっと不思議だったのは、他の常連さん達がどんなに待たされることになっても、その席に座らせろとは決して言わないことだっだ。
毎月十五日だけに繰り返される、謎の儀式的行為。絶対何か意味があると思い、ある日、思い切って顔なじみの常連さんに聞いてみると、悲しい話を聞かされた。
俺の知らないある常連さんが、この店へ来る途中、事故で亡くなったというのだ。その人がいつも座っていたのがカウンター端の席で、亡くなったのが何月だったかの十五日。だから毎月、月命日ってことで、十五日はそこの席を誰にも座らせないようにしているらしい。
悲しい話だと思った。でもじきに、おかしな話だと思うようになった。
亡くなった人には悪いけれど、店だって商売だ。月に一度とはいえ、一日がかりで座席を一つ潰すのは儲けに関わるだろうし、客の方だって、本当は一つ席があるのに待たされるのはいい気分じゃないだろう。
美談のようになってるけれど、無駄なことをしてるんじゃないだろうか。
そんなことを思うようになったある日、俺は、店が席を封鎖している本当の理由を知った。
たまたまその月の十五日に店に行った俺は、奥から二つ目の席に座ることになった。
好みのラーメンを頼み、すすっていると、ふと、開いてる側のカウンター上に一杯のラーメンが置かれた。
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