嘘つきなお見合い

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約束の13時。 私の嫌な予感が当たっていないことを祈った。 でもその期待は大きく外れた。 「失礼します...」 はぁ...やっぱり。 先日のお見合い相手がそこにいる。 聞き間違いじゃなかった。 彼は社長で、その会社は私の会社の重要な取引先。 その席でそんなことを言っていた気もする。 興味がなくて聞いてなかったのは私。 き、気まずい。 「佐伯くん、ありがとう」 「いえ...では失礼します」 お茶を出してさっさと退室しようとした時。 高梨社長がフッと笑った。 っ... 「春山社長、この方は?」 「あぁ、この子は先月入社した私の専属秘書だ。まだまだなんだがこれはこれでよいものをもっている。」 「ほう...」 なにを見ているのか。 私をじろりと見つめてきた。 「佐伯くん、挨拶」 「し、失礼いたしました! 春山社長の秘書をさせて頂いております、佐伯美祐と申します。」 「どうぞよろしく」 初めましてのようなあいさつ。 そうじゃないけれど。 「は、はい...」 「では佐伯くん、下がりなさい。」 「はい、失礼します。」 私は退室した。
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