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「………?あれ…?」
「………」
自分の身体が浮いている。確か自分は今、騎士装備をつけていて、空中戦闘用の物には換装してないし、というか新人の自分に空中戦闘用装備なんて配備されるわけがないし。
それよりも…。
(今さっき…ミサイルの直撃を…受けた…受けるはずだった…のに)
不思議なことに、身体は何てことは無く、未だに宙に浮いている。
まぁ浮いているわけではないのだが。
「降ろすぞ」
頭上から聞こえた声に顔を上げる。それと同時に、身体が地に落ちた。ゴシャ、とコンクリートに凹みを作りながら、鎧が音を立てる。衝撃に少し頭を揺さぶられながらも、顔を上げると、暗がりに二本の線が光っていた。喉の奥から小さく音が漏れる。
周囲に明かりは無く、兜の目線部分が発行しているとわかっていても、その光景は不気味に見えた。
暗がりに溶ける漆黒の鎧。それはどこかで聞いたことのあるものだった。
『また黒騎士の手柄か。だが隠密でやるとはやはりけしからん』
上司が言っていた。隠密部隊に所属している有能な男がいると。
「貴方がそのけしからん騎士ですね!!」
「………、は?」
思わず、といった風に出た言葉は、思っていたよりも若く聞こえた。そこへ、鎧の駆動音とホイールが地面と擦れる音が響く。
「新入り!!…!黒騎士か…?おい!所属と名を名乗れ!」
ギャギャギャッ!!と脚部のホイールを横滑りさせ、赤いマントをはためかせて駆けつけたのは、直属の上司。黒騎士をけしからんといった張本人だ。
白い鎧の胸部からは、周囲を照らす灯りが点いており、その光は二人をも明るく照らした。と思えば、漆黒のコートは光を反射せず、暗がりに溶け込み続けている。
「…隠密班所属、ヤヨイ・ミカグラ曹長」
「第四騎士団第二部隊長のクライス・ヘベルハス中尉だ。ウチの新入りが世話になったな」
ヘベルハスはミカグラの横でへたりこんでいる自分の部下を叱責する。
「何をボケっとしている!サッサと立て!まだ作戦の途中だぞ!持ち場を離れさせて悪かったな。行ってくれ」
ヘベルハスの言葉に頷いて、ミカグラはその場から姿を消した。
文字通り、音もなく、注視していたはずの二人でさえ、どのように去ったのかわからないほど気配もなく、姿を消した。それを更に不気味に思いながら、自分の背筋を正した。
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