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「はぁーあ、クッソ、よりにもよって隠密に助けられるタァな…。それにしても…、リウノ一等ォッ!!」
「はいぃいいい!」
更に背筋が伸びる。着込んでいる鎧がけたたましく暗がりに響いた。
「敵を前にしてあの腰の引けようは何だゴルァ!!騎士なら敵を打ち倒して見せろバータリがァ!」
「ご、ごめんなさぃいいい!!」
ヘベルハスは大きくため息をついた後で、身の丈を大きく超える長さの槍を仕舞う。伸縮自在な槍は厚さ10センチ程度、直径30センチ程の円盤となり、彼の小円盾に収納された。
クライス・ヘベルハス。階級は中尉。大柄ながらも細身のサイボーグに魂を移した転生者。サイボーグと言っても、騎士甲冑なので、厳めしいことに変わりはない。真紅のマントを背負い、相手がどれだけ銃弾やミサイルを撃ち込もうが決して回り込まず、正面から立ち向かう。悪さをする奴は必ず捕まえる、所謂正義漢だ。
その部下で、実は今日が初陣のカタル・リウノ一等兵は肩を落とした。下げた視線の先には、これまた厳めしい二丁拳銃が揺れる。前線に出る彼女達新兵にとって、この二丁は標準装備だ。
そして、リウノは『人間』である。
別段、人間が珍しいわけではない。単純に、サイボーグと比べて余りにも脆い。幾ら堅いパワードスーツに身を包んでいたとしても、中身の脆さは自分が一番よくわかっている。そしてヘベルハスもそれをよく知っている。なのでこれ以上彼女を叱ることはしなかった。
「ったく、戻るぞリウノ。このままじゃ手柄が隠密班に持ってかれる」
「はい!」
脚部のホイールを駆動させ、二人は作戦区域に戻っていく。
今回の作戦は、スラム街を乗っ取ったサイボーグ至上主義者の捕縛もしくは殲滅。余りにも抵抗が激しかった場合には殺害も許可されているこの作戦、既に殲滅戦に変わっている。
ある程度の抵抗はあったが、何より、スラム街の『人間』を全て殺害してしまったことが大きな一因だった。更には、その場にいたサイボーグ達をも引き込んで戦う駒にしてしまっていた。その為、スラム街自体を全て封鎖、絨毯爆撃はしていないものの、全ての通路から一斉に殲滅作戦を開始した。
それももう終わりそうな頃、敵方からの反撃を受け、今に至る。
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