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二人が急いで先ほどの前線地域に戻ると、前線は更に進軍しており、ある一つのビルを囲むように騎士団が盾を構えている。恐らく、この中に敵の首領がいるのだろう。隠密部隊が秘密裏に設置した内部のカメラが映す。
「状況は?」
ヘベルハスがモニターを監視する男に声をかける。
「依然変わりなく。我々の優勢ではあるものの、内部の其処彼処に爆弾が仕掛けてあるため正面からの突破は難しいかと」
と、そこで、モニターの内容が切り替わる。カメラであることに変わりはないのだが、何処かを移動している様子が克明に映し出されている。
そして、一箇所、床の…いや、恐らく天井の一枚を外すと、其処には今回の主犯サイボーグが映し出される。
「…!こいつ…やりやがったっ」
『ッグ』
天井から素早く主犯の肩に乗り、目の前の首が回転した。ガギンッ!と鈍い音と共に、主犯の男が倒れこむ。一瞬遅れて、それに気付いた取り巻きが得物を構えるが、それももう手遅れ。その背後から隠密部隊の面々が頭に銃を突きつけた。
鼻まで隠れた黒い仮面を付けた顔が目の前に映る。
『制圧完了、工作部隊は爆弾の除去を開始せよ』
モニターの映像が消え、周囲が慌ただしくなる。
「また持ってかれた!クソ!こんな事騎士がやるようなことか!」
「そんなこと言っても、正面突破で怪我人を増やすよりは大分マシだと思いますよ、中尉」
「ロートス…お前までそんな事…」
「実に合理的な判断だと思いますよ」
「だからと言って騎士がおいそれと不意打ちに甘んじて良いものか、否!断じて否だ!」
モニターの前にいた男はため息とともに立ち上がり、自分が広げた機器を仕舞い始める。簡易デスク、椅子、モニターに至っては空中投影だ。仕舞うのは小さなプロジェクターのみ。それら全てが収縮可能で、トランクケース一つに収まってしまう。
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