2人が本棚に入れています
本棚に追加
教室の戸を開けたら、そこには…。
入り口ギリギリに信楽焼の狸が居た。
ごく当然のように、入り口を塞いでいる。
しかもそのサイズ、あまり背の高くない私の胸辺りに頭があり、その幅はどうやって入れたんだろうというくらいドアと同じ。
「…クラスメイトなの?」
笑いを堪え切れず、涙目になりなが、後ろにいる来(らい)君に聞く。
「大人ならフツーにわかるだろ…!」
だよね~と笑いながら、無理だと分かりながら、そのデカイクラスメイトを押してみる。
ズズッと少しズレた。
ははは、笑いが堪えられん。
「来君のクラス、楽しそー。」
来君は、もう一つの入り口から教室に入ろうとしていた。
私も慌てて追いかける。
先生は、まだ来ていなかった。
今日は、息子の三者面談。
どうやらクラスメイトと揉めたらしく、その解決が拗れに拗れているとか?
詳しく話を聞くため放課後に呼び出された。
気が重いのは確か。
でも、もう図体のサイズは、中学で私の背を越している。
体重は…いい勝負というか、勝ってしまっている残念な現実。
細すぎるんだよっ!
モヤシ息子めっ!!
そんな来君は、昔から物分かりが良く、問題一つ起こさずここ迄来た。
私の息子にしては、成績は、そんなに悪くもない。
これは、ミラクル。笑。
性格も穏やかで冷静。
ちょっと母にだけ冷たい。
笑って欲しくて、変な行動を加速させてしまう。
よく笑う男の子だった頃を、未だに忘れられない。
思春期、難しか~っ!
「先生、呼んで来るわ。」
来君は、パタパタと走って行く。
「えーっ!ここに1人残されたら母は、不審者ですけどー。」
立っていた入り口から、母、叫ぶ。
廊下の突き当たりの角を曲がる来君と入れ違いに、教師らしき男性が歩いて来た。
あぁ、ほらね。
こういうタイミングで人は来るのよ…。
あははっと、大人しそうな保護者顏で会釈する。
開き直っとこ。
そう思って教室の奥に向かい、窓に近付く。
そして、先程の男性教師が通り過ぎようとした。
最初のコメントを投稿しよう!