第1章

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教室の戸を開けたら、そこには…。 入り口ギリギリに信楽焼の狸が居た。 ごく当然のように、入り口を塞いでいる。 しかもそのサイズ、あまり背の高くない私の胸辺りに頭があり、その幅はどうやって入れたんだろうというくらいドアと同じ。 「…クラスメイトなの?」 笑いを堪え切れず、涙目になりなが、後ろにいる来(らい)君に聞く。 「大人ならフツーにわかるだろ…!」 だよね~と笑いながら、無理だと分かりながら、そのデカイクラスメイトを押してみる。 ズズッと少しズレた。 ははは、笑いが堪えられん。 「来君のクラス、楽しそー。」 来君は、もう一つの入り口から教室に入ろうとしていた。 私も慌てて追いかける。 先生は、まだ来ていなかった。 今日は、息子の三者面談。 どうやらクラスメイトと揉めたらしく、その解決が拗れに拗れているとか? 詳しく話を聞くため放課後に呼び出された。 気が重いのは確か。 でも、もう図体のサイズは、中学で私の背を越している。 体重は…いい勝負というか、勝ってしまっている残念な現実。 細すぎるんだよっ! モヤシ息子めっ!! そんな来君は、昔から物分かりが良く、問題一つ起こさずここ迄来た。 私の息子にしては、成績は、そんなに悪くもない。 これは、ミラクル。笑。 性格も穏やかで冷静。 ちょっと母にだけ冷たい。 笑って欲しくて、変な行動を加速させてしまう。 よく笑う男の子だった頃を、未だに忘れられない。 思春期、難しか~っ! 「先生、呼んで来るわ。」 来君は、パタパタと走って行く。 「えーっ!ここに1人残されたら母は、不審者ですけどー。」 立っていた入り口から、母、叫ぶ。 廊下の突き当たりの角を曲がる来君と入れ違いに、教師らしき男性が歩いて来た。 あぁ、ほらね。 こういうタイミングで人は来るのよ…。 あははっと、大人しそうな保護者顏で会釈する。 開き直っとこ。 そう思って教室の奥に向かい、窓に近付く。 そして、先程の男性教師が通り過ぎようとした。
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