第1章

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パタパタと走る足音が近づいて来た。 あれは、来君だな。 昔から聞き慣れた足音。 「担任の先生も来られたみたいですね。では、失礼します。」 せんせは、急に態度をちょっとヨソヨソしくした。 そうだね、過去の距離感には居られない。 「はい、これから…がんばります…。先生もお元気で。」 ちょっと笑って、そして頷いて廊下にスッと出て行くせんせ。 入れ違いに来君が前髪を立たせて入って来た。 そんなに走らなくていいのに。 むしろ、廊下は走らないでね。 「担任、もう来るから。」 可愛いね、来君。 私が1人で心細いと思って、走ってくれたんだよね。 ずっとこの17年、優しさを振りまかれて来た。 私の天使は、もう大きくなってしまった。 あの頃の私と同い年。 初めてせんせに出会った年齢。 お互いに、もう交わる必要のない人生を歩んでいる。 上手く喋れてたかな…。 変に勘ぐってなかったらいいな…。
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