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ふふふっと妙な笑いが込み上げて来る。
もう、一生会わないと思っていたせんせ。
デカイ狸に立ち会われながら、来君の居る場所で、いとも簡単に出会ってしまった。
大丈夫。
所詮は、狸に化かされたようなもの。
後2年もすれば、来君は卒業して、せんせとの縁は存在しなくなる。
余裕でやり過ごせるはず。
バレるはずがない。
笑いすぎて零れたように見える涙を、来君が呆れて見てる。
「ね、来君、この狸生きてるのかなぁ。」
「そんなワケないだろ…。そのぶっ飛んだ脳みそ、本当やだ。」
来君、冷たっ!
ぶっ飛んだように見えるおかげて、多くの事を誤魔化せる。
散々悩んで来たこの空気の読めなさは、本当にいい隠れ蓑。
ずっと…私に化かされてればいいんだ。
「…あの、この狸、もしかして持って来られました?」
教室の入り口にいる狸と向き合いながら、担任の先生が恐る恐る声を掛けて来た。
「…そんなワケあるか…。」
ブスッと不機嫌な来君。
いつか事実を知った時、この日を思いだすのかな?
その時、来君は…怒るのかな?
雷に打たれたような衝撃波が来るんだろうね。
それまでは、いつ来るか分からない嵐の下で、化かされていてね。
沢山の偶然や必然に囲まれた世界は、全てミラクルだと思えば、面白い人生なんだよ?
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