第1章

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ふふふっと妙な笑いが込み上げて来る。 もう、一生会わないと思っていたせんせ。 デカイ狸に立ち会われながら、来君の居る場所で、いとも簡単に出会ってしまった。 大丈夫。 所詮は、狸に化かされたようなもの。 後2年もすれば、来君は卒業して、せんせとの縁は存在しなくなる。 余裕でやり過ごせるはず。 バレるはずがない。 笑いすぎて零れたように見える涙を、来君が呆れて見てる。 「ね、来君、この狸生きてるのかなぁ。」 「そんなワケないだろ…。そのぶっ飛んだ脳みそ、本当やだ。」 来君、冷たっ! ぶっ飛んだように見えるおかげて、多くの事を誤魔化せる。 散々悩んで来たこの空気の読めなさは、本当にいい隠れ蓑。 ずっと…私に化かされてればいいんだ。 「…あの、この狸、もしかして持って来られました?」 教室の入り口にいる狸と向き合いながら、担任の先生が恐る恐る声を掛けて来た。 「…そんなワケあるか…。」 ブスッと不機嫌な来君。 いつか事実を知った時、この日を思いだすのかな? その時、来君は…怒るのかな? 雷に打たれたような衝撃波が来るんだろうね。 それまでは、いつ来るか分からない嵐の下で、化かされていてね。 沢山の偶然や必然に囲まれた世界は、全てミラクルだと思えば、面白い人生なんだよ?
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