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この趣のある建物は僕のお気に入りで、わざわざ麗華の頼みを受けるのも、たんにここへ来たいという個人的な願望が含まれていた。
建物の中も古さはあるが汚くはなく、手入れが行き届いており清潔感がある。
木目調の美しい廊下を歩き、折り返しの階段を上がると、麗華の通っている心理学部の研究室があった。
開き戸をあけ中を覗いてみると、本棚の前で麗華が立っていた。
「おはよう。麗華」
「ああ、聡一郎。ずいぶん早かったね」
天窓から射し込む朝陽が麗華の艶やかな黒髪に輪をかける。
僕は思わず魅入ってしまい、扉を開けたまま彼女の立ち姿を見つめていた。
見慣れているはずの容姿は、大人と子どもの中間に位置しながら、えもいわれぬ色気を醸し出している。
十人中、十人が振り向くであろう眉目秀麗な容姿は、普通のど真ん中に立つ僕には勿体ない。
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