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心を奪われていた僕へ、麗華は薄く微笑み手招きをした。
誘われるがまま本棚の前へ歩み寄ると、彼女は羅列された本を指差した。
「聡一郎、君には分かるだろう?」
「えっ」
「これは美しくない。いつものように頼むよ」
「ああ、並び順ね」
「うん。お願いする」
似たようなタイトルの本が並んでいて、一見すると正解が分からない。
しかし、僕は正確な並び順を覚えている。
「相変わらず見事なカメラアイだね。聡一郎」
手早く並べ終えた僕の頭を、満足そうに背伸びをしながら麗華は撫でた。
――カメラアイ。
瞬間記憶能力、サヴァン症候群ともいわれるこの能力。
僕は産まれつきこの力を有していて、一度見たものは画像として脳内に保存されている。
それも、目を開けた瞬間からだ。
自我の形成より前の記憶さえ、思い出そうとすれば画像として写しだせる。
まるでアルバムのように、時系列にそって保存されているんだ。
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