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僕はしばし麗華の柔らかな手つきに身をゆだねていたが、並べ終えて一冊のレポートが余っていることに気がついた。
「麗華、これいつもはないやつだよね?」
「ああ、それは教授の研究室から拝借してきたものだよ」
「なるほど……」
表紙は、心理的外傷と殺害における精神作用について、と書かれていた。
著者は東谷新〈ヒガシタニシン〉。
どうやら卒業生の卒論らしい。
僕の手からレポートを受け取り、麗華は表紙を見つめながら、参考にはなった、と呟いた。
麗華はこうして心理的外傷後ストレス障害、PTSDに関する資料を見つけては、遅くまで読み耽っている。
すべては僕のために。
たまに申し訳ない気持ちで胸が一杯になる。
僕がいなければ、麗華は別の生き方を見出だせたのではないか、と。
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