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「教授、何かを隠していないかい?」
しかし、そんな話題を麗華が見逃すはずもなく、意味ありげな胡散臭い作り笑顔を顔にはりつけ、教授へじわりと距離を詰めた。
あからさまに狼狽えた教授は、麗華が近づく速度に合わせて後退する。
「な、何も隠してなんか……」
「教授、つまらない嘘はやめようか。声が上ずっている、視線が泳いでいる、利き手を反射的に後ろへ回している……隠し事ないし嘘をついている人間に見受けられる行動だよ。というか、心理学の教授なのに演技が下手過ぎやしないか? 三文芝居もいいとこだ」
「ぐむ……だ、だって、絶対に君……首を突っ込むでしょ?」
「なら最初から訊かなければいい。察するに、リスクを冒してでも情報を得たい理由があるのだろう?」
「……まあ、そうだけどね。なんか釈然としないんだよね。御影君にそう言われると」
「さあ、話すといい。耳を貸そうじゃないか」
「……雨の日の道化師」
「オカルトの類かな?」
「わからないんだよね、それが。通り魔説もあるし」
「どういうことだい?」
教授の曖昧な説明に、業を煮やした麗華は眉を顰めた。
若干、蚊帳の外になりつつある僕は、夜勤明けだし早く寝たいなぁ、なんて関係のないことを考えていた。
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