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「あっ……ああっ……」
僕の年齢は四歳を迎えたばかり。
人と比べて少しだけ頭の発達はよかったけれど、まだまだ世間知らずだった。
今、自分の置かれている状況がとてつもなく危険であると、気付けないほどに。
ごそり、と、背後から物音がした。
本能が恐怖を抱いたのか、じわりと背中に汗がにじむ。
振り返ってはいけない、と、僕は念仏のように胸の内で唱え続けた。
だが、運命は見過ごしてくれなかった。
「子ども……か……」
声と、床板を踏みしめた音が同時に耳へ届く。
逃げなければならないとわかっているが、恐怖の鎖が僕の足をとらえて離さない。
やがて足音は止まり、僕の首筋へ鉛色の刃がそえられた。
あとほんの少し力を加えれば、細首などいとも簡単に切り裂いてしまうだろう。
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