プロローグ

4/5
前へ
/107ページ
次へ
「いや……だ……」  喉をゴクリと鳴らし、掠れた声で僕は訴えた。 死にたくない、と。 すると、スッと刃が僕から離れていく。同時に腰が抜けた。 へたり込んだ僕はつい振り返り、相手を見てしまった。 「う……あああああああああ!!」 凶器をはらんだ瞳が僕を睨み付け、あまりの恐ろしさに大声をあげる。 「黙れっ!!」 「がっ……」 頭に激しい衝撃をうけ、僕は横倒しになり、父さんと母さんの隣へ仰向けに倒れた。 煩わしそうに犯人が舌打ちをし、何かを持って部屋を去る。 僕は薄れゆく視界の端で、書類のようなものを手に持っていた犯人の後姿を覚えた。  ――それから二時間。 「総一郎! 総一郎!」  僕の体を強く揺り動かし、必死に叫ぶ少女がいた。 「麗華……僕……は……」 目覚めたとき、隣に両親の姿はなく、麗華とその両親が悲痛な面持ちで佇んでいた。 「総ちゃん……大切なお話があるの……」 おばさんは目元をハンカチで押さえながら、僕へ両親が亡くなったことを伝えた。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加