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「いや……だ……」
喉をゴクリと鳴らし、掠れた声で僕は訴えた。
死にたくない、と。
すると、スッと刃が僕から離れていく。同時に腰が抜けた。
へたり込んだ僕はつい振り返り、相手を見てしまった。
「う……あああああああああ!!」
凶器をはらんだ瞳が僕を睨み付け、あまりの恐ろしさに大声をあげる。
「黙れっ!!」
「がっ……」
頭に激しい衝撃をうけ、僕は横倒しになり、父さんと母さんの隣へ仰向けに倒れた。
煩わしそうに犯人が舌打ちをし、何かを持って部屋を去る。
僕は薄れゆく視界の端で、書類のようなものを手に持っていた犯人の後姿を覚えた。
――それから二時間。
「総一郎! 総一郎!」
僕の体を強く揺り動かし、必死に叫ぶ少女がいた。
「麗華……僕……は……」
目覚めたとき、隣に両親の姿はなく、麗華とその両親が悲痛な面持ちで佇んでいた。
「総ちゃん……大切なお話があるの……」
おばさんは目元をハンカチで押さえながら、僕へ両親が亡くなったことを伝えた。
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