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僕の脳裏に浮かび上がる、父さんと母さんの遺体。
血で汚れた部屋、首もとで怪しく笑う刃、そして……犯人の常軌を逸した瞳。
「あ……うああああああ! ああああああ!」
突然狂ったように叫びだした僕を、麗華が精いっぱい抱きしめる。
おばさん達は慌ててナースコールを押した。
僕はそのまま鎮静剤を打たれるまで、ひたすら涙をながし叫び続けた。
「ああ、嫌な夢だ――」
もうずいぶんと昔のことなのに、こうして忘れられないでいる。
額に浮かんだ汗をシャツの袖で拭い、僕は窓の外へ視線を移した。
――雨が降っている。
あの日と同じような雨が、轟々と。
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