第一話 僕と彼女

3/16
前へ
/107ページ
次へ
夜間のピークは零時頃で、その後はぽつぽつとしか客は訪れない。 一時間に一人来店すれば良い方だ。 僕は裏手に引っ込み、スマホを手にとってパイプ椅子に腰かける。 メールの受信画面を見ると、彼女から十件のメールが届いていた。 今、流れ星が流れていったね。 そうそう、明日は大学へ来てくれないか? 頼みたいことがあるんだ。 という一件で済みそうな内容が、わざわざ三件に別れていたりする。 以前、彼女に訊ねてみたが、これはこれで意味があるんだと一蹴された。 僕にはさっぱり理解できないが、彼女がそう言うのならそうなのだろう。 わざわざ異を唱えたりしないし、変えようとも思わない。 僕にとって彼女という存在は全てであり、彼女にとって僕は全てだ。 互いに依存した関係だと十二分に分かっている。 ーー御影麗華〈ミカゲレイカ〉。 幼馴染みで恋人である彼女からのメールは、今日も他愛のないものだった。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加