第4章 カップル

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式を挙げるんなら、まずは会場を探さないといけない。兎に角にも、会場。 「へぇ、すげぇな、この会場」 結婚情報のサイトを誠の勤務先の前で眺めてた。 今日はこれから洋介とも合流して、会場を探す。 探すっつうか、洋介が予算、飯、人数、全部が希望に沿う場所があるって自信満々に言い放ってた。 そんな場所があるなら、もう見つけてるって思いつつ、黒髪短髪で別人みたいに笑う洋介がそこまで言うなら、今日、見学にって話になった。 スマホの画面の上にある時計を見ると、そろそろ誠の仕事が終わる時間だ。 でも、あいつが定時ちょうどに上がったことなんてほぼないからな。 実際、まだあいつの愛車チャリは交番のとこに置いてない。 きっとどっかで市民のために頑張ってるんだろ。 「会場高けぇ……ゼロひとつ多いだろ」 もともとレストランで挙げるつもりだったから、結婚式会場って感じのとこはスルーしてた。ただ、衣装とかどういうのがあんのかなって。あと、結婚指輪とか。 「うわ、これ、五百円で半人前分ずつでも食えるのかよ」 何気なく開いたページ、その会場では見学に来たカップル限定で竹コースの料理全品を半人前ずつ試食できるらしい。 五百円で、フォアグラも鴨肉のなんとか風も、大トロの寿司一巻も食える。 これ、誠が知ったら大騒ぎしそうだな。 五百円で! なんて、驚いて、あの栗色したでっかい瞳を爛々とさせる。 でも、カップル限定で休日のみ、見学ツアーみたいになってる。 「……」 カップル、だからな。 俺達がそこに一緒にいたら、すげぇ違和感なんだろうな。 誠はそれを―― 「はい、危ないです! スマホ見ながら歩きは危険です! それに、ここ、自転車専用道路です!」 「!」 不意打ちで後ろから、世界一よく知っている声が聞こえてビクッと身体と心臓が飛び上がった。
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