第4章 カップル

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「誠っ!」 「エヘヘ、ごめんね。待たせたね」 そこにはおまわりさんの誠が愛車に跨って、息を切らして立っていた。 終業時間オーバー、そろそろ日が落ちるのが早くなってきたから、ギリギリまで取り締まり頑張ってた。 警察官がそこに立っているだけでも違うんだよって、引き締まった顔で前に話してたっけ。 俺の肩口から顔を出して、驚いてる俺へ嬉しそうに満面の笑みを向ける。 「すぐ、着替えてくる!」 自転車に乗り直して、しっかり安全運転で交番に戻ってく。 今、スマホの中身、見たか? カップル限定ってとこと、五百円で豪華ディナーを試食ってとこ。誠なら豪華ディナーって文字に絶対に食いつくのに、スマホは薄暗くなったここじゃきっと眩しいくらいに発光して目立ってたはずなのに、見えなかった? それとも、スルーした? 「……」 カップルって書かれてる中に、同性のペアはたぶん含まれてない。 この国じゃ ここじゃ 同性の結婚は男女と同じには扱われてねぇ。 どんな会場なのかな。 安いといいよね。 でも、待ち合わせたのはすぐ隣の駅だから、洋介さんが見つけた会場って、近所? それなら僕らでも見つけてるはずなのに。 どこにそんな掘り出し物件があったんだろう。 着替えを終えて、おまわりさんの印象が全部消えて、柔らかく、思わず手を伸ばしたくなる栗色のクセっ毛をぴょんぴょんさせる誠が嬉しそうにずっと話してる。 さっき俺が見てたサイト、誠は見てなかったのかもしれない。 俺を見つめて、パッと顔を出した瞬間、声をかけたのかもしれない。 「おーい! 誠さーん!」 「あ! 拓海、洋介さんいた! おーい! やっぱり、あれだね、髪型が違うから一瞬わかんないね」 頬を綺麗なピンク色にさせながら、楽しそうに洋介へ手を振り返してる。 俺が交番のとこに迎えに来てる、その時間に間に合ってないって、あんなに息切らしてたんだ。スマホの中なんて覗いてないかも。 「遅くなって、すみませーん!」 ブンブン手を振ってた。近くに行ってから話せばいいのに、一生懸命、洋介に謝ってる。誠は生真面目だから、嫁である俺のスマホだからってむやみやたらと覗かない気もする。
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