1174人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのね、会わせたい人がいるんだ」
誠には珍しく朝、真剣な顔をしていた。
言葉も少しだけ硬い。
大学の頃からすごく信頼している友人、でも――そこで誠が言葉を詰まらせた。
「いいよ。今から?」
コクン、と頷く誠の表情で、ラスボス登場かなって思った。
「誠の友人の粕谷だ」
喫茶店で、微かに聞こえるのどかなBGMには似合わない低く威圧的な声。
「かっちゃん! その言い方!」
「言っただろ。俺は認めてない」
やっぱ、ラスボスだった。
誠が大学生の時、きっと今と何も変わらずぽわんぽわんしていて、まん丸な瞳でニコニコ笑って、すげぇ可愛いだろう誠がマシュマロみたいな王子だとしたら
このラスボスはそのすぐ背後に控える、裏では何をしてるかわからない参謀長って感じ。
するどい目つきに、キリッとした口元。
眼鏡でもかけてスーツ着てたら、様になりすぎて、顔はかっこいいけど誰も近寄らないだろうって感じ。
「誠は騙されるんだ」
「あのねぇ、かっちゃん!」
そんな眼光鋭い男がタオルを頭に巻いて、無精ひげで、そんでもって下駄に甚平で現れたんだ。少しだけ驚いて時間が止まった。
こっちがお父さんだろ。
同性愛に反対して、ちゃぶ台ひっくり返してドンガラガッシャーンっていうイベントをしてくれるお父さん。
誠の本物のお父さんみたいに笑顔で男の嫁を歓迎するんじゃなく、こっちが通常、ノーマルだ。
「騙されるとるに決まってる!」
ほら、口調もお父さんじゃん?
「男同士だぞ! けしからん! 結婚? しかも、ホストクラブだって? ありえん! ホストだったのか? ほら、やっぱり騙されるんだ!」
「かっっちゃん!」
誠が顔を真っ赤にして怒ってた。
最初のコメントを投稿しよう!