第10章 大歓迎ドンガラガッシャーン

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もう本当にラスボスだ。 定番の、俺達が非難されるだろう言葉がすっげぇ並べられてる。 元ホストと男同士の結婚、に対するリアクションなんてたぶんこっちが正解だ。 俺達の周囲が特別寛大なだけ。 「誠! 指輪のこと、どんなに頼まれても俺は作らないからな!」 「かっちゃん!」 指輪? 結婚指輪のことか? 「誠? 指輪って?」 「あ、あの、かっちゃん、指輪作る職人さんなんだ。だから、僕らの結婚指輪を……頼んだんだけど」 「断る」 きっぱりと言われて、誠が残念そうに肩を落とす。 「誠……」 小さな喫茶店じゃ、普通の声で話したって会話は丸聞こえだ。 そして、皆が興味津々になるような単語がポンポン飛び出してる。 俺もほんの少し前なら、この人の言葉に身構えてた。 ホストクラブで結婚式なんてって思ったのはたしかだし。 会場のことだけじゃない。 結婚の準備を始めた途端、目の前に突きつけられることが多くなった男女がする恋愛との差をすげぇ感じてる。 衣装だってそうだ。 花嫁用のドレスは必要なくて、花婿用のタキシードを二着選ぶってことにも 結婚指輪がふたつとも男物のサイズだってことも どうやっても俺らを知らない誰かに、結婚する男同士のカップルとして接しないといけない場面がある。 俺はその時に、一瞬だとしても戸惑った表情を向けられるかもしれないのが嫌だった。 俺じゃなく 誠がその視線に晒されることが嫌だった。でも―― 「全員に歓迎してもらえるなんて思ってねぇよ」 「ほら! 言葉使いだって!」 「でも、あんたには認めてもらう」 「なに?」 血管ぶち切れそうなラスボス、もしくは定番の父親、のリアクションに背筋を伸ばして答えた。 こんな反応、もう何度だって思い浮かべたっつうの。 王道すぎて、何度も何度も頭の中で繰り返し再生されたんだよ。 「誠があんたに俺らの大事な結婚指輪を作って欲しいって思ったんなら、俺はあんたにだけは結婚式に参加してもらう」 「はぁ?」 「必ず、クリスマスにはアクアに来てもらう」 こんなリアクションにビビってたら、誠の嫁は務まらねぇよ。
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