第11章 誠の親友

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自分の過去があんまり好きじゃねぇ。 ホストして甘い言葉を軽く囁いてた頃、誠はチャリで走り回って、酔っ払い介抱したり、見回りしてたんだと思うと溜め息吐きたくなる。 でも、そんな俺をまるっと全部好きだって断言するから。 俺もホストをしていた頃の自分を否定しないことに決めた。 「何度見ても……すげぇな……」 でも、写真で見るとやっぱ居た堪れない感じになる。 誠がいない間にこっそり持ち出したホスト時代の写真。 この写真を俺の昔の部屋から見つけたのは誠だ。 今の部屋にふたりで越す時、クローゼットの奥から発掘して大喜びしてた。 俺が先に見つけてたら、絶対にその場でゴミ箱行きだっただろうけど、誠が先に見つけて大事に隠してた。 改めて見てみると、ちょっときつい。 チャラすぎ、適当すぎ、こんなだったっけ? って首を傾げたくなるくらいに、ホストっぽい俺が唇の端だけ吊り上げて笑ってる。 今も別にチャラいだろうけど、たしかに昔の俺とは違ってる。 「……」 その違いはもう一枚の写真と比べるとよくわかる。 昔の俺は、この写真みたいな笑い方はしなかった。 こんなふうに笑うようなことも、その笑顔を向ける相手もいなかった。 誠の実家へ続くローカル線がガタガタ揺れる度に見比べてる二枚の写真も揺れていた。 今日は休日だから、電車の乗客もどこかのんびりしてる。誠は今頃、チャリで走り回ってるかな。 ――仕事、頑張れよ。 いつもみたいに玄関先で見送ったら、誠が素直に手を振っていた。 今日、お前の地元にひとりで行ってくる、とは言わなかった。 粕谷、誠の親友に指輪を作ってもらう、そのために俺達のことを納得してもらわないといけない。ふたりでまた休みが合う時に一緒に地元に戻って説得しようって言ってたけど、これは俺がひとりでやりたいって思ったんだ。 あいつが首を縦に振らない原因は「俺」だから、俺が歓迎できないんだから。 「……」 ガタガタ揺れながら、そっと窓へと振り返る。 良かった、今日は晴れてるから、外周りだとしても誠はしんどくねぇな、って、電車の窓から空を見上げて思った。
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