第11章 誠の親友

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「俺は認めないと言ったはずだ」 工房へ訪ねると、この前と全く同じ格好をしてた。 タオルを頭に巻いて、無精ひげで、甚平に下駄。工房が暑いのか、汗をそのタオルで適当に拭きながら、ものすごい深い皺を眉間に刻んでる。 「この前、誠の地元の友達が集まった席に俺もいた」 「……」 「あんたの話も出たよ」 「……」 ――粕谷君はまこっちゃんのボディガードみたいになってたもんねぇ。拓海君のことは認めないかも。硬派だし頭カッチカチに固いし、私、何度も喧嘩したことあるもん。まこっちゃんが窮屈だろうがー! って。別にまこっちゃん天然だけど、ちゃんとしてんのにさ、過保護なんだよねー。 「……原佳代子(はらかよこ)だろ」 「アハハ、正解」 眉間の皺が更に深くなった。 誠が天然だから、ぽーっとしてるように見えるから、だから守ってやらないと、俺みたいな悪い虫がくっつくかもしれないって、ずっとそんな顔して見張ってたんだ。 「まったく……原佳代子は……」 でもこいつは悪い奴じゃない。 あれと一緒。頑固親父。 頭ごなしに否定はするけど、それはたぶん思い込みが激しいっつうか頭が固いから。 でも、頭が固い分、生真面目なんだ。 俺に誠は騙される、元ホストでこんなチャラチャラした奴って言っていたけど、工房まで来て説得しようとする俺を門前払いすることなく、工房の入り口にある軒先で、茶を出してもてなしてくれる。 眉間の皺はすげぇけど、追い返すんじゃなく、自分もその軒先に腰を下ろしてる。ぶつぶつ文句は呟いてるけど、犬猿の仲だった女子の名前をちゃんと覚えている。 すげぇめんどくせぇけど良い奴なんだよ。 そりゃそうだろ。誠がこいつに指輪を作ってもらいたいって思ったのは、こいつに認めてもらいたいからだ。 親友だからだ。 そして、誠が親友だと思うのなら、こいつは絶対に良い奴だ。 「これ、大昔の俺」 手渡した一枚の写真に、もう皺だけじゃ済まないくらいに表情を渋くした。 「……けしからんな」 「だよな」 即答で同意したら、びっくりした顔してた。 鋭い目つきで、いっつも硬い表情してそうだけど、あまりに目を丸くするから、こっちも驚く。
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