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「俺もこの頃の自分とか、すげぇ嫌い」
「……」
「ホストしてて、チャラチャラしてて、適当なことばっか話して、お客の話を聞いてる顔してるだけ。そんで相手が欲しい言葉をそのまま返す」
「……」
こういう職人肌の人間には訝しがられるだろう。
真っ直ぐ太陽みたいに温かい誠の周りにいる、同じくらい真っ直ぐで温かい人達には、俺はどう見えるんだろうって、ずっと思ってた。
髪形気にして、ピアスしてないほうがいいだろうって、繕って、真面目そうなスーツ着て。
そんな俺に、誠はいつだって「大丈夫、拓海はカッコいいよ」って笑ってた。
ちゃんとしないとダメだろってその度に答えながら、鏡チェックしてたけど。
「んで、これが、数年前に撮った誠と俺の写真」
「これは……」
三年前の写真。
「この子は! まさか、お前のっ!」
「アハハ、ちげぇよ。眞子、俺の友達の姪っ子」
「なんだ、友達の姪っ子か。って、じゃあ、全く関係ない子どもじゃないか」
「あぁ、でも、俺の子どもみたい?」
ホストしてた頃の俺が写った写真ともう一枚、そっちには俺と誠、それに生まれたばっかの眞子が写ってる。
三人で。
眞子をそっと緊張しながら抱く誠と、その誠と額がぶつかりそうなくらい近くで、ぎゅっとふたりを丸ごと抱き締める俺。
この写真を撮ったカメラマンは姉貴だ。
姉貴が俺らに抱っこされた眞子を撮りたいって、病室で。新生児なのにいいのかよって、ビビる俺達に早く早くって。
驚くほど柔らかくて、小さくて、軽くて、すげぇ、甘いミルクの匂いがしてた眞子。
「その写真、すげぇ気に入ってるんだ」
「……」
「その時と、ホストの時、全然違うだろ?」
同じ笑顔なのに、こんなに違うのかってくらいに笑い方が変化した。
「その写真の俺が、誠と一緒になってからの俺だよ」
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