第11章 誠の親友

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誠と出会って俺は変わった。 見比べたら一目瞭然でそれがわかるはずだ。 一目瞭然で、本気であいつのことを想ってるってわかるはずだ。 「マコ……? この赤ん坊の名前、もしかして」 「そう、誠から二文字もらってる」 「……」 「全然、俺らとは血なんて繋がってねぇけど、眞子は今、三歳で俺のことを拓海オヤジって、誠のことはマコパパって呼んでる。たまにウチ来て飯食って、誠に叱られて、俺に抱っこされて、すげぇ可愛いよ。美人だし」 家族だって、俺らも、眞子も姉貴も思ってる。誠の血を引く子どもと三人で写真は撮れねぇけど、家族はいる。 あんたが心配していることを全て解消してはやれないけど あいつに色々苦労はさせるだろうけど 俺らは一緒にずっといるって約束し合ったんだ。 「俺はたしかに誠にはふさわしくないかもしんねぇ。あいつみたいに、すっげぇ一直線になんて生きてきてねぇから」 あの長い上り坂を毎日誠がチャリで登ってた頃、俺はダラダラ過ごしてた。 おまわりさんで頑張ってた頃、俺は高い酒を開けさせることばっか狙ってた。 そうじゃなかったらよかったのかもしんねぇ。 あいつみたいに一歩一歩坂を上っていけてたら、あんたはもっと大歓迎してくれたかも。 でも、どんなに遅くても、タイミングがズレてても、誠と今、その坂を一緒に上ってる。 あいつと一緒ならどんな急坂だって、ピクニックみたいに楽しいんだ。 変われたこと、俺を変えてくれたことを認めて欲しい。 俺らがどんだけすげぇお互いを好きなのかってことを、手を繋いで歩いていくって決めたことを認めて欲しい。 「男同士だけど世界一あいつのことを幸せにする。絶対に。言葉で言うのはすげぇ簡単だし、将来のことなんて誰にもわかんねぇけど、でも、俺は今の自分が誇らしいよ」 愛する人の隣にいて、そんなふうに笑えることを幸せだと、心底思う。 「指輪、宜しくお願いします」 深く頭を下げた。 こいつにしてみたら、大事な親友である誠の相手に俺は相応しくないだろうけど。 「俺も生涯を誓う指輪をあんたに作ってもらいたい」 「……」 「宜しく、お願いします」 あいつと、一生、ずっと一緒にいるって約束を形にした指輪をこの親友に作ってもらいたいって、頭を下げた。
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