第12章 桜色の君

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会場も飯も、招待状も終わった。 打ち合わせに行く度にアクアのスタッフ、キャストが式を手伝うと言ってくれた。 式当日の流れだって決まって来てる。着々と式の日が近づいて来てる。 「なぁ、結婚指輪どうすんだ?」 洋介の案内で衣装を貸してくれる百貨店に来てた。 ホテルとかで借りるのとほぼ値段変わんねぇのに、良いデザイナーの衣装があるからって。選ぶのも個室でできるしって。 婦人服フロアも紳士服のところも全部すっと飛ばして、あんまり来たことのないフロアに降りた。 貸衣装と写真館、それに高級時計の隣には高級アクセサリーがショーケースに並んでいる。奥にはウエディングドレスとタキシード、それに七五三なんかの着物が飾られてた。 「結婚指輪、もう決めたんだろ?」 洋介の両脇には高そうな指輪がズラッとある。 結婚指輪や婚約指輪にちょうど良さそうな感じの。 それを洋介が見て思い出したように、何気なく尋ねてきたけど。 「まだ、決めてねぇ」 じつは誠の親友、粕谷から連絡はまだ来てない。 認めていないし、指輪も作る気がないってことなのかもしれない。 「マジかっ? あと二ヶ月ねぇけど? ちゃんとした指輪作るなら、サイズ測ったりもするし、すぐには買えないかもしんねぇぞ? 中に文字とか入れるなら、一ヶ月くらい見といたほうがいいし」 「えっ! そうなの?」 ショーケースの中をチラチラ覗いてた誠がパッと顔を上げた。 その横顔は思いっきり、どうしよう、って顔してた。 「平気、指輪はもう頼んでる」 「拓海……」 どうしようって顔して俺を見つめてる。 ふたりでやっぱり説得しにいったほうがいいんじゃないかって。 でも、誠も秋から年末は事故を防ごうって事で仕事がかなりきつくなってきてた。 休みの日には、今日みたいに式のことであっちいって、こっちいって、誰かんとこに挨拶しに行ってって。だから、丸一日かけて実家に行くのはちょっとしんどい。 俺がしっかり頼んだからって、大丈夫だからって、言ってある。 言ってあるけど、あいつからの連絡はまだない。 もちろん、指のサイズだって何もむこうは知らない。 つまり、俺らの指輪は作ってもらえていない。 「そうなの? なら、よかった。まぁ、まだ二ヶ月近くあるからな。早く出来上がるといいな」 まだ時間ならある。
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