第12章 桜色の君

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「ぁ、あの、イングリッシュローズみたいな」 「可愛いですよね。それと同じ造花のミニブーケはないのですが、白くて丸いお花でこんなのを胸のところに挿すと……」 やっぱ、プロが隣で色々アドバイスしてくれるとわかりやすかった。 数え切れないほど並べてくれた中から自分達で選ぶとなるとけっこう大変だけど、こうしてイメージさせてくれると選びやすい。 「あ、あの、ピンクで揃えるとかも」 「えぇ、もちろんできますよ。そうですね……そしたら」 こんなのはいかかです? って、見せてくれた白に近いピンク色のタキシード。 微妙にデザインが違うけど、色が同じだからこれ着て並んだら、もう……。 「これ、素敵です!」 「ご試着されますか?」 「はい!」   もう、多分、これで決まるだろうなって。 誠の表情を見ただけで思ったよ。 すげぇ、いっぱい何着もあるけど、この桜色をしたタキシードに真っ白で丸いイングリッシュローズの花を飾った誠が綺麗だろうなって思ったから。 「おぉ……いんじゃね?」 付き添いとして同行してくれてる洋介が部屋を仕切ってるつい立てから出てきた俺達を見て、笑ってた。 「なんか、照れるな、お前がそんな格好するなんて」 「だな」 バカばっかしてた頃からの付き合いだから、洋介にしてみたら、こんなタキシードなんて着込んでる俺は変だよな。 俺も洋介がこんな格好したら、絶対に笑う。 照れて、なんか苦笑いになって、困る。 でも、こそばゆいけど、嬉しいと思った。 バカな頃からの俺を知ってる洋介にこうして手伝ってもらえることが嬉しいって。 だから、あいつにも 誠の親友の粕谷にも同じように苦笑いを零して欲しいって思うんだよ。 「すごくお似合いですよ」 鏡の前には男ふたり、桜色のタキシードに桜色の頬、んで、すげぇ嬉しそうな笑顔がふたつ並んでる。
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