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「ねぇ、拓海」
当日にはこの俺達の周りにも笑顔が溢れてたら最高だ。
洋介も、それに粕谷も。
「僕が一生拓海を幸せにする」
「……」
「拓海のことをずっと笑顔にするね」
静かに、そっと告げられた言葉。
自分から告ってきたくせに、真っ赤になって照れた誠が鏡の中で笑ってた。
俺も、今のその笑顔をずっとさせてやる。ずっと、だ。
「あっちぃぃ」
「サイズ、こちらで合わせますか?」
洋介はそっぽを向いてわざとスーツのジャケットはためかせて、店員さんはにこやかにメジャーを首にかけてた。
俺達はふたりでほぼ同時に、宜しくお願いしますって頼んで、緊張からピーンとマネキンみたいに固まってた。
そんなに硬くならないでって言われたって、無理だろ。
で、マネキンのまましばらく仁王立ちして、採寸が終わった時にはなんか呼吸困難みたいに真っ赤だった。
「そしたら、あとはお色直しか」
「あ? 洋介?」
「はい! お願いします! あの、洋介さん!」
「大丈夫っすよ! ちゃんと、頼んであるんで」
は?
俺、何も知らねぇんだけど?
ニヤリと誠が笑って、洋介も笑って、なんでか店員さんもすげぇ晴れやかに笑うから、逆に三人の笑顔に俺は後ずさりしたくなる。
おいでおいでと、招かれた一角にある衣装を見て、俺の叫び声が貸し衣装屋の個室から思いっきりこだました。
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