第12章 桜色の君

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「ねぇ、拓海」 当日にはこの俺達の周りにも笑顔が溢れてたら最高だ。 洋介も、それに粕谷も。 「僕が一生拓海を幸せにする」 「……」 「拓海のことをずっと笑顔にするね」 静かに、そっと告げられた言葉。 自分から告ってきたくせに、真っ赤になって照れた誠が鏡の中で笑ってた。 俺も、今のその笑顔をずっとさせてやる。ずっと、だ。 「あっちぃぃ」 「サイズ、こちらで合わせますか?」 洋介はそっぽを向いてわざとスーツのジャケットはためかせて、店員さんはにこやかにメジャーを首にかけてた。 俺達はふたりでほぼ同時に、宜しくお願いしますって頼んで、緊張からピーンとマネキンみたいに固まってた。 そんなに硬くならないでって言われたって、無理だろ。 で、マネキンのまましばらく仁王立ちして、採寸が終わった時にはなんか呼吸困難みたいに真っ赤だった。 「そしたら、あとはお色直しか」 「あ? 洋介?」 「はい! お願いします! あの、洋介さん!」 「大丈夫っすよ! ちゃんと、頼んであるんで」 は? 俺、何も知らねぇんだけど? ニヤリと誠が笑って、洋介も笑って、なんでか店員さんもすげぇ晴れやかに笑うから、逆に三人の笑顔に俺は後ずさりしたくなる。 おいでおいでと、招かれた一角にある衣装を見て、俺の叫び声が貸し衣装屋の個室から思いっきりこだました。
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