第13章 誓いの言葉

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挙式に教会式と神前式のふたつがあるけど、俺らは三つ目の式にすることにした。 人前式だ。神様じゃなくて、来賓に向かって自分達の言葉で誓う式。それの言葉をふたりで考えてた時だった。 「ねぇ、拓海、指輪、お店で頼もう」 言葉ひとつひとつを考えて、スマホで例をいくつか探しながら、自分達で誓いの文章を考えてた。 「どうした? 急に。粕谷って、誠の友達に頼んだだろ?」 「でも、もうすぐ一ヶ月だよ?」 指輪の内側に言葉を刻印するのなら、一ヶ月は必要だ。洋介がそう言っていた。 「あいつに頼んだ」 「でもっ!」 「もし最悪、あいつが指輪作らないのなら、そん時に買えばいいだろ」 「そしたら、刻印できないよ」 知ってる。 でも、刻印だけを後日ってこともできるはずだ。 わかってる。 誠がそれじゃあ、人前式で皆の前で誓う意味がないって思って、今、手を止めたのはわかってる。 指輪を交換して、その内側に彫った互いの名前をずっとその指に留めておく。 この人を生涯大事にしますって、その手を繋ぎながら皆の前で誓うからこそ、今、選んでる言葉に重みが出てくる。 そんなの、俺だってわかってる。 「指輪、お店で買おう」 「それじゃ、意味がねぇだろ」 「でもっ」 わかってるんだ。 刻印した指輪で誓いたいってことも。 でも、その刻印された指輪を、親友で、一番お前のことを心配してくれてたあいつに作ってもらうからこそ、もっと意味があるんだろ。 「じゃあ、次の休みに僕が行って頼んでくる」 「俺がもう頼んだ」 「でもっ! それじゃあ」 それじゃあ、あいつは納得しない? 歓迎しない? 「いいから、誠、言葉考えようぜ。来週には、お前、職場でやってくれる歓迎会もあるし、忘年会もあるんじゃなかったっけ?」 「そうだけど」
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