第13章 誓いの言葉

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年末のおまわりさんは大忙しだ。 俺が出会ったクリスマスの時もすげぇ多忙で、年明け、次のデートに誘えたのはずいぶん経ってからだった。 だから、その多忙極まりない年末になる前にできることは全部終わらせておかねぇと。 「拓海……」 「指輪はお前の親友に作ってもらったやつがいい」 「でもっそれじゃあっ」 ぶっちゃけ、指輪なんてそんなにこだわっていない。 ホストの時にジャラジャラつけてたし、これを身に着けて欲しいってプレゼントされたすげぇ高い指輪だって、今はもうどこにあるのかわからない。 ホストやってた時は本当に適当だったから。物の値段なんてそんなに意味ねぇよ。 高い指輪でも出店に並んでる指輪でも、物は物だ。 言葉は言葉。 指輪の裏側に刻んだからって、それが永遠に叶うっていう保証書にはならない。 そこに想いが込められてるからだ。 だから、その物に価値がある。 言葉に重みが出てくる。 「早く、言葉考えようぜ」 テーブルに肘ついて、邪魔臭くなってきた前髪をかき上げる。式の前には切りに行かねぇと。 「でも、拓海、もう間に合わなくなるよ」 「大丈夫」 「でもっ!」 「平気だって!」 生まれて初めての結婚式で、やることすげぇあって、あれ決めてこれ決めて、んで洋介やアクアのスタッフに連絡して、まだ音楽選ばないといけないだろ。 すげぇ、忙しいから、少しだけ焦ってた。 俺も、誠も。 だって、もう結婚式まで一ヶ月とちょっとだ。もう十一月の中旬だ。 「指輪、間に合わないよ……」 「……」 楽しみにしてるって、知り合いに言われる度に、あぁ! って元気に返事が出来ない自分達がいる。結婚指輪がない結婚式じゃ、って、心のどっかがじりじり焦り始める。
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