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無糖SF
「時の風に吹かれて」SFシリーズ短編
「無糖」 青山和美著
一
江戸時代に下町が繁栄したのは、隅田川の交通の便が良かったからと言われている。隅田川を浅草あたりでは浅草川と呼んだし、両国付近では、大川と呼んだ。多くの愛称で呼ばれたと言うことは、この川が人々の暮らしの中で愛され、生活に密接に関係したことを意味している。この隅田川の繁栄は、隅田川-荒川-新河岸川ルートと言う水上輸送路による所が大きい。滝廉太郎の「花」の中の「春のうららの隅田川、のぼりくだりの船人が、櫂のしずくも花と散る……」とは、この水上ルートの春のにぎわいを歌っている。このルートは、下町を繁栄させ、またその起点である川越と、その途中の河岸に大いなる繁栄をもたらした。川越は、観光のため、家並が復元され、今もその繁栄の名残を見ることができる。だが、その途中のたくさんの河岸は、昭和の初期の東武鉄道完成と共に衰退し、現在、そのおもかげをほとんどとどめない。
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