第1章

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「周りからどう見られているかは知らないけど、普通の学校だよ」 「そ、そうですよね・・」  頭では分かっているのだが、友人から聞いたことがあった─────定時制の生徒は元ヤンが多いと。  竹野も時期外れの転校してきたくらいだから、もしかすると十代の頃は不良だったのではないだろうか。今は地味な見た目だけど実は・・・・ 「あの・・・竹野さんは私から見て普通に大人だと思うんですけど、同級生の人にはやっぱりヤンチャしてた人がいたりとかするんですか?」 「いるよ」  あまりにもあっさりと肯定されて真央はぽかんと口を開けた。 「色んな事情の人がいるよ。俺あんまりそういった事に踏み込まない様にしてるから分からないけど。ただ、昔悪かった人達って、今も見た目がそう変わってないからクラスの中でも目立つかな」 「こ・・怖かったり、ないですか?」 「いやぁ、見た目どうでも一応勉強しに来てる人達だから、基本真面目だよ」 「絡まれたりとかは?」 「ないよ・・・ていうかどんなイメージもってんのさ」  苦笑いを浮かべる竹野の目じりにうっすら浮かんだ小皺に、きっとこの人も何かしらの事情があって、それは知り合ったばかりの自分が簡単に踏み込んではいけない領域である事を真央は確信した。 「・・・・ごめんなさい。送ってもらってるのにナビ止めちゃ進めないですよ ね」 「うん・・じゃあ車出すね」 「はい、お願いします」  もう徒歩で帰宅できるところまで来ていたのだが、何だかもう少し竹野と話していたくて真央はナビを再開した。 「真央さ、微妙にモテ期に入ってない?」 「モテてるっていうのかなぁ・・・」  友人に指摘されてもいまいちピンと来ない真央はドーナツにパクリと齧り付いた。  竹野とあった経緯も知っている友人の沙織がその後の進み具合を知りたがって、ボート部の練習後に捕まってから駅前のドーナツショップに二人で来ていた。  初めはいつものバーガーショップに行こうと沙織が言ったのだがあそこは竹野がいる。何故だかあの店で話すことに気が引けて、たまには甘いものがいいと我儘を言ってこの店に来たのだった。 「でも大学生の彼氏さんは毎日会えないんだねぇ・・」 「うん、今テストがあるって言ってた」 「やっぱり高校とは違うんだね」
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