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「うん・・・」
マメにメールする方じゃないと上村は言っていたがそれは本当だった。
タオルをプレゼントした日、真央は帰宅してすぐにこれからよろしくといった内容のメールを送ったが上村からの返信は次の日になっても無かった。
「で、で、もう一人の男の人にはいきなりいきなり車に乗せてもらっちゃったりしたわけだよね。なんかそっちの方が深くない?」
黒目がちの瞳で緩い笑みを浮かべた沙織が、「一口分けて」と真央のダブルチョコドーナツを齧る。
あの日、自宅近くのコンビにまで送ってくれた竹野に別れ際、「昨日はゴメン」と謝られた。。
前日に勤め先のバーガーショップで会った時、気まずい別れかたをした事を一応気にかけてくれていたようだ。
車に乗せるただの口実でなかった事が真央はすごく嬉しかった。
「その人は何なんだろうね。真央の事どうしたいんだろう」
「それは・・・私にも分からない」
見ず知らずの男の車に乗せてもらって家の近くまで送ってもらったなんて妹にも相談できずに、真央はその晩一人で色々考えた。
「やっぱりダメだよねぇ、上村さんこの事知ったら怒るかな」
「言わなくていいんじゃない? 向こうだってほぼ自分の都合だけで真央に会いに来てるわけだし、アドレス交換しても何も言ってこないんでしょ。年下だと思って甘く見られていない? 確かに背が高くてカッコイイ人だけどさ」
ティーポットを傾けて最後の一滴までカップに注いでいる友人の手元を真央はぼんやりと眺めた。
「次いつ会えるかな・・・」
「さあね────ところで真央、今彼氏さんに会いたくてどうしようもないって思ってる」
「どうしようもなくってほどじゃないよ。でもまぁ・・・会えればいいなとは思ってるけど」
「やっぱその程度の想いかぁ・・・」
カップの中身を飲み干した沙織が真央の目の前にピンと人差し指を立てた。
「いーい、今真央が最優先すべき事は県大会なんだよ。部の全員が真央が優勝するの楽しみにしてるんだから。絶対インターハイに行ってもらわなきゃ」
「インハイって・・・重いなぁ。そこまで勝てるかなぁ」
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