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それ以上は踏み込んだことは聞かないでおいた。必要以上に他人のプライベートを詮索するのは気が引ける。
その後は他愛もない世間話を交わしながら瀬川の家に到着した。
「今日はありがとう、佐伯君が一緒にいてくれたから安心して帰れたよ」
「それは良かった、早くストーカーを逮捕できるように俺たちも頑張るからさ」
マンションから出ようとした時、入り口から一人の男性が入ってきた。
ジーンズにパーカーというラフな格好の痩せた男性、ここのマンションの住民のようだ。手に持っている袋にはコンビニで買ったと思われる弁当とお茶が入っていた。
「あ、国本さん。こんばんは」
学校と同じ屈託のない笑みを見せた瀬川に国本なる男性は軽く会釈して返す。学校でそのスマイルを向けられて俺は思わずドキッとしてしまっだ程だ。
「誰?」
「同じ回に住んでる国本雄也さん」
無言で俺の方を見てくる国本さんに耐え切れなくなり俺は「どうも」とだけ言って軽く頭を下げる。
「・・・」
しかし彼は無言でエレベーターホールへと消えていった。人見知りなのだろうか・・・
「じゃぁね佐伯君、頼りにしてるから」
「お、おう」
瀬川スマイルに戸惑いながらも俺はマンションを後にする。
外は日が暮れてすっかり暗くなってしまった。この辺りは街灯も少なく夜は不気味だ。
「誰だ!?」
俺は電柱の影に人を見つけた。瀬川が言っていたストーカーとは彼なのだろうか、俺はカバンを放り出して人影を追い掛ける。
路地の交差点を抜けたところで人影を見失ってしまった。ヤツはこの辺りの土地に詳しい人間らしい。
「クソッ!」
俺は道端に落ちていた空き缶を思い切り蹴飛ばした。
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