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「花火、きれいだね。」
車の左窓から見える、次々と打ち上げられる花火を観て
優が呟く。
「えっ う うん。そうだね。」
慌ててを相槌を打ったけれど、実は花火どころじゃなかった。
優に見とれていたから・・・。
花火を楽しそうに観ている横顔。
ストレートの長い髪。
細く白い二の腕。
ワンピースのボタンが少し窮屈そうな胸の膨らみ。
スラリと伸びた脚。
彼女の全てに見とれていた。
「えっ? 花火観てなかったの?」
急に振り向くと悪戯っぽい笑顔で言った。
暗い車内が彼女の笑顔で一瞬、明るくなった気がした。
まずい!見とれていたのに気づいたのか?
今までも、鋭い彼女のカンに焦ったことは何度もあった。
「ね~どこ観てたの~?」
今度は拗ねたような口ぶりで問い詰める優を見て、何かが弾け
とんだ。
優しく肩に手を掛けて、こちらを向かせる。
急に神妙な表情になり、何も言わずにじっと見つめている優に
向かって緊張しながら告白をした。
「好きだよ・・優。」
花火の音が聞こえなくなり、静寂の中で自分の心臓のドキドキ
している音だけが響く。
顎に手を当て上に向けさせると、瞳を閉じ素直に従ってくれる優。
ゆっくり顔を近づけていく。
軽く閉じられた唇に優しく触れる。
少し押付けると押し返す弾力が気持ちいい。
少し薄めの上唇を軽く挟む。
優の唇が微かに開く。
少し厚めの下唇を挟む。
プルンとした感触が気持ち良くて2度、3度と押付ける。
目を閉じていても優の唇の形が分かる。
手を握った時の皮膚が触れ合うのとは違う、
もっともっと優を感じられる数秒間。
この瞬間を止めて置きたくて、唇を離すと強く抱きしめる。
「好きだよ・・。」
左肩にコクリと頷いた優を感じた。
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