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「はーるな!ラッキーじゃん、イケメン転校生君と隣の席で、校舎案内係にまで任命されて」
食べようとした厚焼き卵を、お箸で挟んだまま思い出したように話すのは、私の親友、成瀬 唯。
「ら、ラッキーではないかな、私、説明とか、そーゆーの苦手だし」
唯のその言葉に、口の中に入ったご飯をもぐもぐさせながら、なぜか慌てて答えてしまう。
「またまた~ 武内に"聞いてるのか~!?"なんて、言われるぐらい転校生君のこと見てたじゃん」
‥‥確かに見てたけど。
「で、いつ校内案内すんのよ?」
若干ニヤけたような顔をした唯は、もう打ち解けたのか、クラスの男子と一緒にお昼を食べている"彼"をチラリと見る。
ーー唯、絶対楽しんでる。
「早い方が良いって思って、お昼食べたらすぐやるつもり」
敵うはずないと分かりながらも、せめてもの抵抗で、唯を睨みながら答える。
「ふーーん。仲良くなれるといいね、転校生君と」
やはり、私の睨みは効かないようだ。彼女は完全に楽しんでる。
ーーもう、
「だーかーら、そーゆーのじゃないんだってば!」
「なにがそーゆーのじゃないの?」
明らかに唯ではない声が頭の上から聞こえる。
「「!?」」
振り向くと、話題の張本人である彼が困ったような顔を浮かべて立っていた。
「ごめん、永井さんに校舎案内、今お願いしようと思って来たら大きい声出すからさ、ついーー」
私たちの驚いた反応に申し訳なく思ったのか、 眉を下がらせ謝る彼。
その姿はやはり、私の知っている"彼"を思いださずにはいられない。
「んーん、大した話じゃないわよ。そ、そーいえば春菜が夏目君に校舎案内するのよね!春菜、行ってきな!」
そう言いながら、唯は両手で私と彼の背中を押す。
「じゃ、授業始まるまでには戻ってきてね~」
いつの間にか、教室の外にまで出されていた私と彼は、手を振る唯に唖然としながら、2人で顔を見合わせ、困ったような笑顔を浮かべた。
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