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「ーーじゃあ、行こっか」
少し上擦った自分の声に恥ずかしくなり、彼の様子を伺う。
「うん、よろしく」
そう返事した彼には緊張している様子などなかった。
ーー緊張してるのは私だけか。
ーーーーー
夏目君は、私の下手な説明にもイヤな顔をせず、相槌を打ちながら聞いてくれる。
気づくと私の緊張は溶けていき、本当に"彼"とソックリなだけなんだと思うようになっていた。
そう思うと、会話も不思議と出来てきて、私と彼の間には和やかな雰囲気が流れているようにも感じる。
「ここが体育館。私達が入学してくる前に建て直したみたいだから、まだ新しいんだ」
体育館は少し離れているので、最後に案内しようと決めていた。
「 俺、中学ん時バスケ部だったんけど、体育館がボロくてさ、雨降ったらバケツ必要なくらいに。 もー、床が濡れて練習どころじゃなかったんだよな~」
バスケ部?
やっぱり私の知ってる"彼"ではない。
確信に近いことを聞き、やはり彼はソックリさんなのだと思うと気が抜けてしまった。
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