君を忘れた事はない。

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教室の戸を開けたら、そこには 夢の中でしか会えない君がいる。 西日に照らされながら 本を読んでいる姿は とても儚く、見る者 すべてを魅了する。 教室に入って来た僕に気付くと、 こちらを向き、そっと微笑んで 読んでいる本を優しく閉じる。 「今日は遅かったのね。」 「あぁ。委員会の仕事が長引いてな。」 「どうせ仕事なんてしていないでしょ?」 「うるせぇ。」 何気ない会話。 当たり前な会話。 こんな日常が いつまでも続くと思っていた。 「それじゃあ、帰りましょうか。」 「あぁ。」 時計の針は止まる事を知らない。 どんなに強く願っても 無情に時は過ぎてゆく。 夢の中でも時は過ぎてゆく。 君に会えなくなると 分かっていても、時は過ぎてゆく。 教室を出る時に 君が小声で何かを呟くが その言葉は夢の中でも聞こえない。 何度、聞いても分からない。 ただ1つだけ。 たった1つだけ。 分かることがある。 君を守る事が出来なかった僕は 永遠に君を忘れる事は出来ないのだろう。 どんなに忘れようとしても、 どんなに時間が過ぎようと、 どんなに別の人を好きになろうとも、 どんなに罪悪感に潰されようと、 君と共に、僕は生きていくのだろう。 そう。永遠に。 夢の中の君は 何を考えているのだろうか。 それは、永遠に分からないままだろう。 その答えを見つけるまで 永遠に僕は君を想い続ける。 教室の戸を開けたら、そこには 永遠に時が止まったままの君が 僕に優しく微笑み続けている。
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