第一章

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 005  私の通う学園はエリートが集まる。  生徒を厳しく指導し、管理し、徹底的に鍛え上げる超エリート校――に見せかけて、実際は権力者達の言いなりになってる部分も多く、甘い場面も目立つ。  そのためか、表立っての演説ばかりが多く実際に生徒に役立つ行為は少ない。  弾圧したいならすればいいのに。  偏見を持ってるなら持てばいいのに。  中途半端な説教しかしない。  したとしても、それをするのはいつも生徒の方だ。教師からはまず何も言わない。敵になろうとしない。なろうともしない。いつだって、エネルギーあふれた若者だけが馬鹿を見る。  学園への物の持ち込みだって、権力者の子供達の逆鱗に触れないよう気をつけてる。堂々と教師に見せつけたら注意されるが、隠れてなら全然問題はない。  ようするに、意味がない。  テロリストを警戒すると言いながら、形だけ手荷物検査をされたかのようだ。 「………」  まるで、現代の世相のようだ。  数年前、日本は政治思想が弾丸のように飛び交い、衝突があった。その反動からか。今は逆に衝突を恐れて、意見を抑える風潮があった。  言われたらやり返さない。  やられてもやり返さない。  そもそも、目立つようなことはしない。  それは、平和を保てるという意味ではすばらしいのだろう。  なるほど、理解できる。私の心情は平凡な日常だ。  平和な毎日だ。  だから、ある程度の共感はある。  ……でも、本当は平凡な日常を保つって、一番難しいことのはずだ。人間、明日はどうなるか分からないのが当然であって、毎日が同じことの繰り返しで、退屈で――そんなの、生物として異常に感じる。  学園が近づいて来た。  私はスマフォの曲を止めて、イヤホンを外し、ブレザーの内ポケットに隠す。 (ハロハロー……)  通学路の途中――私に向かって手を振る少女がいた。  赤と黒の――  私は目を見開くが、立ち止まって、よーく目をこらしたが、そこには誰もいなかった。 「……?」  気のせい、何だろうか。  あの少女が、また現れたかのようだった。  HRの時間まで三十分以上余裕をもって学園に到着。  校門をくぐり、大きな銅像が近くにある玄関から中に入り下駄箱に靴を入れて上履きに履き替え、教室へ。
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