第一章

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 009  教室に入るとクラスメイト達があいさつしてくれた。  そして、そのあとに常に仲良くしてる子達があいさつしてくれた。 「あ、おっぱい、到着ぅー」と、イスのうしろに体を向けてすわる女子が言った。  私は眉をしかめてあいさつを返す。 「うるさい、佐藤。佐藤のくせに」 「ちょ、佐藤を馬鹿にするなよ。……よくある名字だけどさ」  佐藤(さとう)はちょっと凹んだ。  彼女は私が仲良くするグループの一人で、ムードメーカー的な役割をになう。  長身で短髪。  部活は陸上部に所属し、一年生ながら上級生に期待されている。 「もう、サトちんが変なこと言うからだよぉ」  と、甘ったるい声の子は鈴屋(すずや)。 「おはよ、シキちゃん」「おは、おは」 「……おはよう」「おは、おは」  鈴屋は身長は佐藤と同じくらいだけど、雰囲気は対称的で激甘。  顔立ちも中性的で身なりを変えれば宝塚のような美形になるのに、手を袖に半分隠したり、声を変な風にしたりしてブリッ子をきどる。悪い子ではない。たまにわけ分からないけど、根は良い子だ。  ふわふわした髪の毛はうしろで一本にまとめられてる。 「うぅ……」と佐藤が声を出す。「よしよし」と、鈴屋がなぐさめる。  いつもの光景。 「………」  佐藤と鈴屋は本当に仲が良く、付き合ってんじゃないかと噂されることもある。二人は縦に並ぶ二つの席で向かい合って、私やそれ以外はわきにいることが多い。ちなみに、黙って私達を眺めるのは祖父江(そふえ)という子だ。 「………」  彼女は大人しい子で、よくこんな子がこの中に入ったなと思う。いや、私が声をかけたんだったか。分からない宿題があって、それを教えてもらったら、気がついたら彼女をグループに入れていた。
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