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遅れて、瀬尾(せお)が登校してきた。
「おーい、遅刻厳禁だぞ」佐藤が茶化す。
「セーフだろ。……ったく、みんなが早すぎるんだよ。眠りが足りない」と、切れ目でいうと本当に怒っているようだが実際はそれほど怒ってない。ジョークを言った、ぐらいにしか思ってないだろう。
瀬尾は私と大して変わらない身長だけど、切れ目で――いやこれ違うか。知的で無駄のないしゃべり方をするから、この中で一番クールに見える。
「今日の、何?」と、瀬尾。
正確に言うなら、今日の授業は何、と聞きたいのだろう。
「……あ、さ、最初は体育」と、危なくワンテンポ遅れそうだった祖父江が言う。
「めんどくさーい」と佐藤が合いの手。
「もう、サトちんは文句言わないの」たしなめる、鈴屋。
「って、佐藤は陸上部でしょ。何でそんなに嫌そうなの」私は誰かの席を借りて座る。
「陸上で運動しなきゃいけないのに、他で運動したくないじゃん」佐藤は、ごもっともな意見を言ってくれる。
「もう、サトちんはぁ」と、指で佐藤をつっつく鈴屋。
違和感。
「――っ」
私はふと、廊下の方に目をやった。
理由があってやったわけじゃない。本当に偶然だ。ただ、何か振り向かなきゃいけない気がした。そしてそれは、思わぬ姿を目撃させる。
(ヤッホー……)
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