第二章

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 015  今日は体育の授業。  朝からラッキーだと張り切る者もいれば、佐藤のように運動部でもメンドーだと言う人はいる。  うちのクラスは生徒会長が死んでも、平然としていた。  HRが終わって男女を分けた着替えの時間になると、少しばかりざわついたが、それも好奇心で起こったものだ。生徒会長が死んで悲しいからではない。生徒会長の葬式は後日行われるようだが、それも何も考えていない。 「ねぇねぇ、生徒会長って病気とかだったの?」 「それとも事故とか? まさか、誰かに恨まれてたり」  近くにいた子が聞いてくる。  私は委員会活動により、生徒会の人と話すことが多かった。  だからか、聞き耳を立てたい人は私に近づい「そういうこと楽しそうに聞くなよ」たところを、瀬尾が止めた。  瀬尾は珍しく切れ目をとがらせる。切れ目が不必要に人を逆立てるため、あまりしない彼女だが、よほど据えかねたらしい。  ――ちょ、私は別に。その。  ――いや、ねぇ?  近づいて来た女の子達は去り、瀬尾が苛ついた目で(お前もあんなの無視しろよ)という目つきでにらんでくる。  いや、彼女の意見が正しいので私はただ反省するばかりだが。  016 「……瀬尾さん、ちょっと恐かったね」  体育の授業。  本日はサッカーだ。  大きな校庭で、少女達が血気盛んに(一部は)運動している。  まぁ、教師がラクしたいから、適当に二クラスで戦わせて授業にするというものだろう。空は青く、体育着の私はまだ残暑が残るひざしを暑いと感じる。  私はやる気がない。  隣には祖父江。 「あの子は意外と真面目だからね。あ、授業態度がじゃなくて。価値観が」 「……うん」  だから、多分ACIDも彼女は嫌いだ。
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