第二章

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 022 「……はぁっ……はぁっ」 「あれれ、運動神経はいいのに。キミ、体力はないんだね」と、クルメは首をかしげる。「でも何だかんだで追いついた。いいね、やっぱり愛してるよ」  女の子を叩きたいと思ったのは、はじめてだった。  私はひざをついて呼吸していたのを回復させる。  彼女を見すえると、クチを開いた。 「――どうしてここに?」  まず一つ目の質問。 「何であなたは周りに気にされないの?」  二つ目の質問。  あきらかに侵入者であり、そんな派手な格好してたら見つけてくれって言ってるようなものだ。 「さらにいえば、何で私につきまとうの?」  三つ目。 「愛してるからだよぉ」 「最後だけ答えないで」  私はすかさず返す。 「……んぅ、それってそんなに大事なこと? 招かれざる来訪者みたいな扱いだよ」  その通りなんだけど。……わざとやってるのかな。 「質問に答えて」 「んぅー」  ――逃げようとしたとこを、腕をつかんで引き留めた。  彼女はポコッポコッと私の手を叩く。……弱かった。「よわっ」思わずクチで呟いてしまうほど。 「………」  気にしたらしい。  クルメは片目だけしか顔が見えないが、あきらかに沈んだ目をしていた。 「わ、わざとだし……ほ、本気出せば」「いいから、質問に答えてくれない?」  私は彼女の反論をさえぎり、もう一度聞いた。  彼女は最初に出会ったとき、何度も聞くのを嫌がっていたが、今なら私がそれを言える立場だ。何度も言わせるな。 「何度も言わせないで」  私は言う。 「質問に答えて」 「うぅ……」クルメはかわいい声を上げて、掴まれてない手でガスマスクのクチに手を当てて……それ、意味あることなのかな。困ったぞ、というポーズを取った。だが、私はそんなの知らない。 「質問に答えなさい」 「し、質問に答えたら……」クルメは目線を下にやって視線を右往左往して、また目線を私にもどす。「付き合ってくれる?」 「いえ?」  また、叩かれる。いや、痛くないってば。 「……ひ、ひどい。悪魔だ、キミは」 「どっちがよ」  格好といい、物言いといい。  これがホラー映画だったら、怪人はこっちの方だろ。
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