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023
昼休みが終わった。
周りの視線に気を配ることもなく。
友人の優しさを真摯に受けとめる余裕もなく。
私はずっと無言でいた。
授業を受けるときは当たり前だが、合間の休み時間とかもだ。
「ねぇねぇ、日本の英語教育っていつも形にこだわるのかな。もっと、使いやすい単語にすればいいのにね。一番優しい英単語でFUCKからはじめるとか」
それしか知らないでしょ。
と言い返したいが、授業中だし……何より彼女の姿は私にしか見えてないようなので、何も言えない。
英語の授業中、クルメはずっと私のうしろでブツブツ呟いていた。
024
放課後。
「シキちゃん、カラオケとかどう?」と鈴屋がさそってくれた。「あ、サトちんはあとで来ることになるけどぉ。シキちゃんは」
「ごめん」私は両手を合わせる。「ごめん、ちょっと今日は」
すると、周りも察してくれた。
「あ、うん。ごめんね」と鈴屋。
「何かあったら電話しろよ」と瀬尾。
生徒会長が死んだことにショックを受けてるんだ、と。
素敵な勘違いをしてくれる仲間。祖父江も心配そうに私を見ていた。
ごめん、本当にごめんなさい。
私がカラオケに行けないのは、そういう理由じゃないの。
どうしても、解決しなきゃいけない用事があって。
「えへへっ、キミったらみんなの誘いを断った。いーけないんだ! いけないんだ!」
025
帰宅する。
私は学園の外に出て、ファッション街を横切り。
「ねぇねぇ、このゴスロリ。超かっこよくない!?」
無視。
駅に向かう。
026
「ねぇねぇ、無視しないでよぉ。相手してよぉ。……うぅ、クルメが何したの? ねぇ、ポコッポコッ叩いたのはあやまるからさ」
電車の中。
何かが私のすそを激しく引っ張るけど無視。
幽霊なんていない。
私はドラッグなんてやっていない。本当にやっていない。だから幻覚なんて見えない。
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