第二章

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 思わず逃げ道を探した。  ま、まど――は、開いてるけど、クルメのうしろだ。  ――う、うしろ。  私の背後はドア。  うしろ手でこっそりドアノブを回せば、あるいは。  でも、追いつかれそう。  というか、ドアを開ける動作だけでワンテンポあるから、その間に追いつかれたらアウトだ。 「逃げ道探してるみたいだけど、クルメは何もしないよぉ」  あっさりと考えを読まれていた。 「それだけ、視線を動かせばね。窓とか、あと、うしろを気にしたでしょ? もう、クルメを侮らないでよ。探偵だからね!」  頭脳は大人?  見た目は子供というか。ホラー映画に出てくる子供のようだが。……駄目だ、ついホラー映画のイメージを思い浮かべ怖くなってしまった。『ハロウィン』を思い浮かべてしまった。今は恐怖に震える場面じゃなく、冷静にどうやって逃げるかを考えないといけないのに。 「魔物遣いだよ」  クルメは、ふと私の頭の中に割り込んできた。  思考がいくつも重なっていたのに。  彼女はたった一言。  奇妙なことを言って。  さえぎった。 「……ま、まものつかい?」  私は目を点にする。 「そう、クルメはね。魔物遣いなの」  私は首をかしげる。 「……???」  漫画かライトノベルみたいな単語だけど……まものつかい?  え、魔物使いって書くのかな。  何だそれ。  RPGの職業みたいだぞ。あんまり強そうじゃないけれど。 「魔物遣いはね。常軌を逸してるんだよ」  クルメは言う。  彼女が言うと説得力がある。 「魔物遣いはね。心の歪みから発生した怪物――いや、魔物をあやつるの。だから、魔物遣い。あ、つかいってのは、ものを使うとかじゃないよ。使役の、じゃないよ。遣いに立てる、の遣いだよ」  それで、まものつかい――魔物遣いだと、クルメは言った。 「そう、魔物遣いの魔物はいわば当人の使者のようなものなんだよ。心の歪み――誰にも見られず、聞かれず、答えられず、認められず――闇の中でくすぶっていたもの。それが、使者として浮かび出てきた。それが、魔物遣いなんだよ」 「………」  心の歪みが魔物を――スタンドみたいなものかな。  いや、あれ歪みじゃなかったか。  まぁ、話を聞くとそこら辺にありふれてそう異能力者系の話に聞こえるけど。  もしくは、ホラー映画の話に聞こえる。  その魔物ってのがいきなり私の前に現れて喰い殺す――また馬鹿なイメージを浮かべた。
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